
「侵略者」の姿がシン・ウルトラマンでは描かれている
あなたは最近公開された大ヒット映画、「シン・ウルトラマン」(出典:フリー百科事典『ウィキペディア』)は、『まるでCCPによる世界侵略の実態を彷彿させるようだ!』という意見が多いことをご存知でしたか?
シン・ウルトラマンは、初代ウルトラマンを現代の技術で新たに作り直した作品で、地球に攻めてくる巨大な「異星人」や「禍威獣」(出典:pixiv百科事典より) からウルトラマンが地球を守るというあらすじの作品です。
きっとあなたも巨大な怪獣がビルを薙ぎ倒しながら、ウルトラマンと戦っているシーンを一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
しかし、シン・ウルトラマンで描かれる異星人の侵略方法は、一般的にイメージされているような「武力」を用いたものではありません。
例えば、作中で出てくるザラブ星人(出典:フリー百科事典『ウィキペディア』)は「友好的な態度」で、日本の政治家に近づき裏から人間同士を操り争わせることによって地球を侵略しようとしてきます。
他にもメフィラス星人(出典:フリー百科事典『ウィキペディア』)という「友好的な態度」を表向きは示し、裏側でどんどん侵略を進める。
そういった「侵略者」の姿が、シン・ウルトラマンでは描かれているのです。


現代を舞台に描くリアリティ
この映画「シン・ウルトラマン」で描かれる日本の政治家たちは、一見「友好的」な侵略者たちを無碍にはできず、彼らの思う通りに操られてしまうのです。
「平和だと思っていた自分の国が気づかぬ間に悪意ある誰かに奪われてしまう。」
とても恐ろしいことだと思いませんか?
こういった侵略行為とは気づかせずに、政治やビジネスの裏側から侵略を進める。
こういった侵略方法を「ステルス侵略」と呼びます。
そして現在、「シン・ウルトラマン」で描かれた「ステルス侵略」の何倍も恐ろしく、しかも巧妙な手口で日本に限らず世界各国がCCPの手に落ちていってしまっている。
映画「シン・ウルトラマン」の見所は、現代を舞台に描くリアリティにあります。
そんな「ステルス侵略」の実態をあなたにも身近に想像して欲しくてブログにしました。
なぜ日本にだけ禍威獣は出現するのか?
映画は100%ストーリーを理解していなくても、そこにある比喩表現や映像表現といった芸術だったり、そこに込められたメッセージを感じ取ることができればそれで十分だと思います。
とはいえ複雑なストーリーは可能な限り理解したいですよね。
そこで「シン・ウルトラマン」のいくつかの疑問について、その答えを紐解いていきます。
まずは冒頭で、なぜか日本にだけ「禍威獣」が現れるようになって、それが日常化しているという設定なのか?
こちらは『ウルトラQ』を扱った展開でした。
そして本編が始まって、最初に登場した「禍威獣」が、電気を食べる「禍威獣ネロンガ」です。
更にウルトラマンが登場したっていう流れです。
ここで2つ目の疑問である、なぜウルトラマンが現れたのかという疑問が発生します。
そして次に放射性物質を食べてしまう「禍威獣ガボラ」が登場しました。
ここでガボラは以前登場していたパゴスと99%が類似している同じ属性の生物であるということが 禍威獣特設対策室専従班 【禍特対】(映画『シン・ウルトラマン』公式サイトより)の調査で発覚します。
こちらは「ウルトラQ」や、「ウルトラマン」で扱われていた着ぐるみネタをストーリーに盛り込んだものでした。
そして劇中のセリフでパゴスとガボラ、そしてその間に登場したネロンガが首から下は同じ形でアタッチメントみたいだと語られていました。
ここで他の禍威獣はバラバラだったのに対して、パゴスやネロンガ、ガボラは誰かが作り出した人工怪獣なんじゃないかという疑問が出てきます。
そして、ここで一旦禍威獣の話は終わって、外星人ザラブが現れます。
ザラブはいきなり禍特対の前に現れますが、その時に『私は外星人、第2号に当たる』と自分で言います。
第1号はウルトラマンのことです。
ここは後で重要になるので、覚えておいてください。
そして、ここで会話が繰り広げられます。
禍特対の宗像室長が『目的は何だ?』と聞くとザラブは『友好条約だ!』と答えます。
もちろんこれは嘘でしたね。
さらに室長が『なぜわが国なんだ?』と聞くとザラブは『最初に着いたからだ、それだけのことだ!』といいます。
ここで麻生裕子が『ウルトラマンが居たからじゃないの?』と言うとザラブは無言でした。
つまり、図星だったというわけですね。
その後ザラブは神永新二と車中で話をするわけですけども、そこでザラブの計画が明かされます。
それをまとめると次のようになります。
ザラブの目的は人類を滅ぼすことでした。
その星にいる知的生命体を無条件で滅ぼすことが私の仕事だと語っています。
さらに仕事とは関係なくザラブの個人の感想としては『人間は高度な科学力と認知力を持っているが、未成熟でむやみに増殖する秩序のない危険な軍隊だ、滅ぼすに値する』と言っていました。
このように人類を外の存在の視点で見ている台詞が『シン・ウルトラマンの面白いところでもありました。
神永新二のセリフにも面白いところがたくさんありましたね。
そして人類を滅ぼす手段についてザラブ星人は『人類に自分達で戦わせる』と語っていました。
ザラブが直接行動するわけではなくて、人類が自ら滅んでいくように仕向けるというわけです。
その方法がウルトラマンです。
なのでコンタクトを取る国はウルトラマンがいる日本にしたというわけですね。
偽ウルトラマンを使って町を破壊することで、日本政府はウルトラマンに勝つための力を欲しがります。
そうすると他国もそれに対抗するため同じ力を欲しがります。
まさに今の世の中の核兵器と同じ状況になるわけです。
『”国”という群だけを争わせて人類を滅ぼすことは、ウルトラマンを利用すれば容易なことだ』とザラブは言っていました。
結果的にザラブはウルトラマンに倒されてしまいました。
ここで全ての謎が明かされる
そしてメフィラスの登場して、ここで全ての謎が明かされます。
まずブランコに乗っているシーンで、多くが語られていました。
しかし、あえて会話だけでサラっと伏線を回収していくっていうところが「シン・ウルトラマン」の脚本の上手さだと思います。
わざと難しい言葉を使っているので、なおさら答えがわかりにくく設定されています。
この手法は「マトリックス リローデッド」でも扱われています。
主人公のネオがアーキテクトというキャラクターからマトリックス世界の真実を聞かされるというシーンで、ただその場で会話をしているだけのシーンです。
「シン・ウルトラマン」もそれと同じで、あえて図や例え話を使って解説をしないことで、真実を難しく見せているのです。
たとえその真実が大した内容ではなかったとしても、『難解』という印象を与えることで物語が面白くなるというわけです。
「シンゴジラ」や「シン・エヴァンゲリオン」でも、同じ手法が使われています。
具体的なメフィラスがやっていた事
それでは具体的にメフィラスがやっていた事をまとめていきましょう。
まずは禍特対の浅見弘子を巨大化させます。
そのことによって巨大化させる力を持っている「ベーターシステム」の魅力を日本政府に見せつけます。
そして日本政府が「ベーターシステムが欲しい」ということになってメフィラスからベーターシステムを手に入れようとします。
” 巨大化計画 “と言われていましたが、核兵器よりも素晴らしい兵器だということで、日本政府は他の国よりも優位に立つための計画を実行します。
そしてその後にメフィラスの目的が明かされます。
それは『人類を生物兵器として使用すること』でした。
メフィラスの目的は人類を滅ぼすことではありません。
つまり、ザラブとは目的が異なるということがわかり、ザラブはメフィラスの手下ではないという結論になります。
メフィラスとザラブはそれぞれ別々の目的で地球を訪れていたというわけです。
また、メフィラスが差し出した名刺には外星人第0号と書かれていました。
ザラブは『私は外星人第2号に当たる』と言っていましたから、メフィラスはザラブやウルトラマンよりも先に地球を訪れていたということがわかります。
さらにメフィラスはウルトラマンに対して『君は人類との融合の最初の成功例だ。それが私の実験でも実証された。そこで人類は生物兵器に利用できる資源だとわかった。その資源を他の知的生命体に荒らされる前に私が独占管理しておきたい。私の目的はそれだけだ』と言っています。
なのでメフィラスの目的である人類を生物兵器として利用する計画は、ウルトラマンが現れた後に思いついた計画であるということが明かされます。
従ってメフィラスは、最初から人類を生物兵器の資源にするために地球にきたというわけではなく、目的はなしに地球にやってきたということがわかります。
簡単な言い方だと、なんか地球に住む人類という生命体を見つけたんだけども、それを使って何か良いビジネスチャンスはないかなと考えていたわけです。
透明禍威獣は電力、地底禍威獣は核物質を捕食する局地制圧用の生物兵器だ
それではメフィラスはネロンガやガボラなどの禍威獣と関係がないのか?
という疑問を紐解くにあたって、こんな会話がありました。
まず、ウルトラマンが『この星に放置されていた生物兵器を目覚めさせたのは君なのか?』と聞きます。
それに対してメフィラスは『そもそも禍威獣を目覚めさせたのは人類の環境破壊が原因だ。大自然の祟りのようなものだ。』と言っています。
つまり、すべての禍威獣は自然に生まれた生物ではなくて、人間が誕生するよりもずっと昔に何らかの形で地球に持ち込まれた生物兵器だったということです。
そして、その生物兵器は地球の中で眠っていたわけです。
けれども人類が地球環境を壊してしまったことによって目覚めてしまったと言ういうわけです。
なので、日本にだけ禍威獣が現れるという原因は、日本がたまたま禍威獣が眠っている地域だったということです。
ここだけ聞くとなんだか都合がいい話に聞こえてしまいますが、禍威獣は自然災害のメタファーだということです。
これはゴジラやシンゴジラにもつながる比喩表現だと思いますし、『ウルトラ Q 』や 『ウルトラマン』に関してもこのことが言えます。
例えば、現実世界で起きている地震で考えてみます。
他の国に比べて日本は地震の多い国です。
それはなぜか、日本がそういう地形だからという理由です。
誰かの陰謀で地震が起こされているわけではありません。
『シン・ウルトラマン』は、日本は古代の生物兵器が眠っている場所だったという設定を扱うことで、自然災害を禍威獣に見立てることで描いているわけです。
さらにメフィラスはネロンガやガボラに関してこのようなことを言っています。
『次世代型の透明禍威獣は電力、地底禍威獣は核物質を捕食する局地制圧用の生物兵器だ』
つまり、ガボラやネロンガが生物として共通点が多いことは禍特対メンバーも考察していたように、生産性を上げるためのモデルがあるというわけですね。
映画で例えるとターミネーターがみんな同じ顔をしているっていうようなイメージだと思います。
その他の禍威獣に関しては生産時期が古いので、ネロンガやガボラのように生産性が意識される前のものだということです。
ここは初代ウルトラマンの着ぐるみ事情っていうのを反映させている設定でした。
最初の頃は着ぐるみを毎回作っていましたが、コストがかかるので着ぐるみを流用することになっていきます。
その考え方が映画世界にも扱われているというわけですね。
まあ細かいところにまで面白い設定が施されています。
ちょっと話がそれましたけども、メフィラスの計画の話に戻ります。
メフィラスはこんなことを言っていました。
『計画はなるべくコストをかけずに進めたい。現地で調達可能な資源はザラブを含めて利用させてもらう。』
まとめますと、メフィラスは禍威獣やウルトラマン・ザラブなど、日本で起きている状況を利用して計画を立てたということになります。
エヴァンゲリオンの碇ゲンドウのように緻密な計画を立てていて、そのために周りをコントロールしていたとか、そういったわけではないということです。
あくまで現状起きている状況を利用して計画を立てたということです。
ウルトラマンが地球にやって来た理由
そして最後に残された疑問がウルトラマンが地球にやって来た理由です。
ゾーフィの話によると『ウルトラマンは光の国の命を受けて地球を監視していた』と言っていました。
なので人類や地球を守るというよりも、秩序を守ることがウルトラマンの使命だということです。
しかし、人類が環境を破壊したことが原因で地球には禍威獣が目覚めてしまいます。
一時は静観していましたが、資源を襲うような強力な禍威獣が目覚め始めたので、こいつらは駆除しておかないとやばいなぁと人間の手には負えないだろうし、地球の生態系にも大きな影響が出るかもしれないということで、ウルトラマンは地球に現れたのではないかと思います。
かつて禍威獣を駆除していた人類が、今度は駆除される立場になるという展開だったり、メフィラスが名刺に外星人第0号と書いていたことはメフィラスの『地球は俺が一番最初に見つけたんだからなぁ』という、そういった意思表示の表れだとも思います。
こういった細かいところも考察してみると「シン・ウルトラマン」が面白くなると思います。
いかがだったでしょうか?
すべてを劇中で説明しないからこそ映画は面白いわけですけども、今現在、日本いや世界が抱えて居る脅威(CCP)について、自分なりに考察してみても面白いですね。
非粒子物理学者 滝明久(有岡大貴)のリアリティ
禍威獣がいて当たり前のところから物語がスタートするので、街の人たちが「また禍威獣現れたねー」みたいな「被害そんなに大きくならなくてよかったねー」みたいな、そんな会話の一つ一つが、さらに会話のリアリティさを出してるなと思いますし、滝のことで言えば、すごく科学の知識に大きな自信があるんですが、どんどんどんどん降り掛かる、自分の力じゃ太刀打ちできない状況を禍特対のみんなで、どう乗り越えるのか、みたいなところも個人的にはリアリティが詰まっている描写だなと思います。
禍特対班長 田村君男(西島秀俊) のリアリティ
ゴジラの時から戦争体験とか、そういう現実にあることを特撮として落とし込んで、描いてきたし、そのことがやっぱり、もちろんこのシン・ウルトラマンも、この国で起きた色々なことを当然考えて落とし込んで、その中で人が無力感を感じたり、その中からもう一回立ち上がったりということを描いていて、僕たちがあの時感じていた、それでも日常過ごしている感じとか、でもヒリヒリしている感じとか、何かそういうリアリティの積み重ねみたいなものを感じましたね。
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