ロシア諜報活動に“国会が激震”

サイレント・インベージョン

グレンコ氏の答弁で不可解な顛末に

 2022/04/02 夕刊フジのニュースです。

 参院の外交防衛委員会に3月29日、ウクライナ人の国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏が参考人として出席した。

 各党議員からの質問に答える中には、当然、当事者らしい貴重な答弁があり、一方でグレンコ氏の答弁をめぐって不可解な顛末(てんまつ)があった。

 順を追って説明しよう。

 まず、当委員会の理事でもある自民党の和田政宗議員が次のように尋ねた。

「テレビのコメンテーターなどが、『このまま戦うと人命が失われたり被害が広がるから降伏した方がよい』という論を展開しているが、どう思うか」

 和田議員の質疑は、先々週の本コラムでも書いた橋下徹氏らの発言を念頭に置いたものと思われる。

 質疑をネットで視聴していた人々からも橋下氏らの名前がコメント連呼されていた。

 この質問に、グレンコ氏は以下のように答えている。

「いまは、基本的に殺戮(さつりく)は戦っている地域付近で行われているが、降伏して全土が制圧されたら全土で殺戮が行われます。決して降伏は人命救助につながらない」

「降伏という選択肢をウクライナ国民一人一人はもう考えていません。仮に、ウクライナ政府が『降伏だ』といっても抵抗が続きます。その場合は政権と国民の行動が不一致になり、さらなる混乱と殺戮につながります」

 橋下氏らの無責任な「降伏論」は、すでに大批判を浴びているので再説明は不要だろう。

 ただ、ウクライナ戦争に関する日本のメディア報道では、コメンテーターと称する人々の歴史や戦争に関する無知が目立った。

 独裁者にやすやすと降伏すれば、待っているのは「粛清」という名の大量殺戮か、奴隷化というのは歴史の通り相場だ。

「21世紀の現代にそんなことがあるわけがない」と思うなら、ロシアが第二次チェチェン紛争中東のシリアで、いかに一般市民を虐殺したかを勉強すべきである。

 今回のウクライナ戦争でのロシアの攻め口が、チェチェンやシリアでのやり方と酷似しているという指摘は、すでに内外の専門家から多数あり、グレンコ氏が国会で述べたのもまさにこの概念である。

 和田議員とグレンコ氏のこの質疑は、産経新聞が記事にした。しかし、この後、なぜかどのメディアも報じなかった注目すべきやり取りがあったのだ。

 質問者は日本維新の会の音喜多駿議員。質問の前に次のような、ことわり口上から入った。

「橋下徹さんは日本維新の会の創設者であり、われわれも深い敬意を抱いているが、いまは民間人で党とは関係がなく、ウクライナ情勢についてはわが党の公式見解とはかなり大きな隔たりがあるということはあらかじめ申し上げたい」

「グレンコ参考人はかねてよりロシアのスパイ、要人買収の問題を著書などで述べている。わが国にはスパイ防止法やインテリジェンス機関がなく、スパイ活動に対して脆弱(ぜいじゃく)であることが課題だが、普段ロシアが行っている諜報活動について参考人が把握していることを教えていただきたい」

 この後のグレンコ氏の答弁が委員会室に激震を走らせたという。

「さっき仰った人(=橋下氏のこと)は法律上は関係ないんですが、ただ、残念ながらあなたがたの党にロシアの侵略を明らかに弁明している人がいるので、その人についてそろそろ考えた方がいいのではないかというのが、私個人的な意見であります」

 グレンコ氏の発言が誰を指したのかはあえて言うまい。

 ただ、ネット中継のコメント欄は特定の名前であふれた。

 委員会室にいた複数の人から、グレンコ氏の発言直後、音喜多氏の隣席にいた鈴木宗男参院議員が、飛び上がるようにして椅子から離れ、事務方に延々と何かを掛け合っていたと聞いた。

 その後、グレンコ氏の答弁のこの部分だけが、「不適切発言」だとして議事録には載らないらしいとも測聞した。

 議事録はまだ公開されていない。

 理事会などの手続きを経るのかもしれないが、国民の一人として、ぜひとも、貴重な参考人答弁を一言一句削ることなく、わが国国会の議事録に残してほしいと熱望する。

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